私はFPの資格こそ持っているものの、相談を受ける"業"(カルマ)をやっておらず、友人からたまに相談される程度であるが、親戚から相続した現物株式の取り回しについて相談を受けたので検討して次のとおり回答した。参考にできる場合があれば参考にしていただきたい。本稿においては相続税については取り扱わず、もっぱら譲渡益に対しての所得税・住民税(20.315%)についての検討である。私は株式会社はてなの株主ではあるが、本稿に出てくる証券会社やその親会社の株を持っていない。
相続財産の特徴
特定口座にある上場株式のみで、時価総額は土地を除いて家が一軒建てられる程度ある。取得価格はまちまちで買ったときから半値になっているもの、2倍になっているものなど。トータルでは新卒の年収程度の含み益がある。
相続人の意向
持っている銘柄に別段愛着はないが、株を売っても別にその現金を使う当てがなく、リスク性資産としての保有を許容する。
解決策案(方針)
売却益に対しては20.315%課税される(相続税を支払っているので相続発生の日から3年10箇月以内に売却した場合に相続税を取得費に上げられるものの、そのスキームについては本稿では扱わない)。これを手数料を抑えつつ、課税額を抑える方向とする。
具体案
移管にあたって、主に払い出す側の証券会社に手数料がかかるが、これはやむを得ない。
現物株式の売り注文・NISA口座での現物買い注文のクロス注文をできる証券会社で発注し約定させるのが最善だと考えられる。(ぱっと調べたところ松井証券ができた。他の証券会社でもできるかと思うが、野村證券、大和証券は出来ないようであった)
直近価格の上下7%以内を指定できるとされているが、下限いっぱいで特定口座で売り、NISA口座で買い。
直近価格の7%低い価格で売却することとなるので譲渡益は圧縮され、非課税となるNISA口座では同様に低い金額で買い付けたこととなるので枠の消化も7%削減される効果が発生する。
具体案を実行する例
取得単価(被相続人の買った価格を引き継ぐ) 1,500円 直近価格(評価額) 4,000円 保有株数 100株
そのまま売却→ (4,000-1,500)円x100株×20.315%=50,787円の課税
7%低く売却→(4,000*0.93-1500)円×100株×20.315%=45,099円の課税 なお、この場合NISA口座でも7%低く取得できることとなるので、将来的にはもう一度5,688円の節税効果が得られ、計11,376円の節税となる。
注意
移管には1単元550円+1銘柄につき550円かかる(払い出す側が野村證券の場合)など、それなりの手数料がかかるので、それもしっかり勘案しよう。持っている銘柄が1単元ずつであったり、含み益が小さかったりすると費用倒れとなる。
また、NISAで買える現物株式も年額240万円にかぎられ、さらに一人当たり生涯で1800万円という制限がかかるので、このあたりもしっかり勘案しよう。